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小児近視抑制

小児近視のリスクと近視進行を抑える治療のご案内

小児近視について

小児の近視には、大きく分けて「仮性近視」と「一般的な近視」があります。

仮性近視

最近では、スマートフォンをはじめタブレットPCの利用や、テレビゲーム等の影響で、お子様が近くを見る機会が増えています。
近い場所を長く見続けると、毛様体筋という、ピントを合わせている筋肉が緊張状態になることがあります。毛様体筋が長時間の緊張状態が続くと筋肉が凝り固まってしまい、遠くを見た時に緊張が解けず、視界がぼやけて見えるようになります。この状態を仮性近視といいます。これは重たい物を長く持っていると、それを下ろしても筋肉が緊張し続けていた影響で腕がこわばって動かなくなる状態と似ています。

仮性近視は、近視ではないのに視力検査で悪い結果が出たり、近視の程度が軽いのに視力が強いなどの症状が見られます。
この場合、点眼治療によって視力の改善や進行の抑制を行いますが、もちろん一番大切なのは普段の生活環境の改善です。

仮性近視の点眼治療には調節麻痺点眼薬(ミドリン)を用います。就寝前にミドリンを点眼し30分程経過すると毛様体筋の筋肉を弛緩させる効果があります。毛様体筋を弛緩させることにより、仮性近視を軽減させます。

注意事項として、毛様体筋が弛緩することで、散瞳(瞳孔が開いた状態)が5時間位持続し、その間はピントが合いにくくなるため、日中は点眼しないようにして下さい。また、点眼すると染みるように感じますが、その後痛みや赤みが持続しなければ問題はありません。

点眼治療を行ったとしても視力の改善が見られず「近視」になる可能性もあります。

一般的な近視

近視の原因は未だにはっきりわかっていないことも多いのですが、大きく分けて遺伝的要素と環境的要素があると考えられています。
幼少時から近視がかなり強ければ遺伝性の可能性もありますが、徐々に進行する近視の場合は、環境的要素が大きく関与すると言われています。

環境的要素で近視が進行する理由は、人間の目は水晶体の周囲の「毛様体筋」が緊張したり弛緩したりしてピントを調節します。
手元よりにピントを合わせた状態が続くとその距離を見やすいように順応するために、眼軸長(目の前後の長さ)が伸びたりして眼球全体の屈折力(目の度数)が手元よりに変化することで、近視が進行すると言われています。

例えば、アフリカの先住民族のように、はるか遠くの獲物を追う生活においては近視になりにくいと言われています。一方で現代の生活、スマートフォンやタブレット、PCやテレビゲーム等、近くのものを見ることが多い生活では、近視が進行することが多いと考えられます。

学校の授業で、黒板の文字が見えにくくなってきたら、眼鏡による近視の矯正を検討します。

お子様の眼鏡の合わせ方について

近くのものを見ようとする時は、目の中の筋肉が緊張して水晶体の厚みを増しピントを合わせます。この働きを「調節」といいます。
目の屈折度(近視・遠視・乱視など)は、ほとんど調節をしていない状態の時に検査をしないと正確に知ることはできません。

子供はこの調節力が強いです。子供が大人より元気に動き回れるのと同様に、調節力を司る毛様体筋が元気だからです。
調節力が強いと、ピントを強引に合わせることができるので正確な屈折度を把握することができません。そのため、調節機能を麻痺させる効果のあるサイプレジン点眼を行ってから眼鏡合わせをします。

サイプレジン点眼後の屈折検査は約1時間程度かかります。子供の眼鏡を作成する時、適切な屈折度の眼鏡作成をするため、当院では小学生まではサイプレジン点眼を行ったうえで眼鏡合わせを行っています。

調節麻痺点眼(サイプレジン点眼)について

調節麻痺点眼の処置を行うと、物を見ようとしてもピントが合わせにくくなり、特に近くのものが見えにくく老眼の様になります。また瞳が大きくなり(散瞳)、光が当たっても縮まりにくくなるため、眩しさを感じるようになります。

点眼効果は上記のサイプレジン点眼の場合、約2日間位続きます。他の調節麻痺点眼薬である「ミドリン」の場合は約3~5時間、「アトロピン」の場合は2~3週間続きます。

検査後しばらくは、細かい文字などは読みにくくなるなど、勉強や読書などに支障が出る可能性があります。幼稚園・保育園や学校をお休みする必要はありませんが、ご心配でしたら眼科での検査後であることを担任の先生にご連絡下さい。

小児近視抑制

当院では、マイオピン点眼薬、オルソケラトロジーを用いた、小児近視抑制の治療を行なっています。

近視の進行

子どもの近視は、主に眼球が楕円形に伸びてしまう(眼軸長が伸びる)ことで、ピント位置がずれることにより生じるケースが多くあります。

近くを見ることが習慣化してしまうと近視になりやすく、一度眼軸長が伸びてしまうと戻ることがありません。そのために眼軸長の伸びを抑えることが、近視の進行を抑制するためには重要となります。

近視を進行させないようにするには

姿勢に気をつける

机で勉強や読書をする際、背筋を伸ばして目と本の距離を30cm以上離すようにしましょう。背中が丸くなると本との距離が近くなります。
また暗い所で勉強したり、寝転がってテレビを見たりゲームをするのも好ましくありません。読書や勉強、またはテレビなどを観る際は、明るい場所で、正しい姿勢を保つことで、眼への負担を最小限にすることができます。

長時間、同じ作業を続けない

長時間、近くを見続けることは眼の筋肉(毛様体筋)が緊張したままとなり、それが継続されると近視の進行につながることがあります。暗い場所で長時間のスマートフォンやゲームを見ると近視が進みやすくなると言われているのはこのためです。
1時間以上近くを見続けることは避け、作業の間に10分間くらい遠くを眺めて目を休めましょう。遠くを眺めることで、毛様体筋が弛緩され緊張が解けてきます。

マイオピン点眼について

マイオピン点眼による治療は、近視の進行を遅らせる(眼軸長の進展を抑制する)という点で、統計的にも臨床的にも有意義な効果が確認されている治療法の1つです。

マイオピンとは

マイオピン(Myopine)は、小児期の近視の進行を軽減させることを目的にアトロピンを0.01%配合させた点眼薬です。
アトロピンが配合されている点眼薬は1960年代から治療に使用されていますが、いくつかの副作用が存在していました。例えば、まぶしさによる不快感や目の痛み、近くの物がぼやけて見える、アレルギー性結膜炎及び皮膚炎の発症、などがあります。

これらの副作用を克服したものが、シンガポール国立眼科センター(Singapore National Eye Centre)の研究に基づいて開発されたマイオピンです。従来の点眼薬はアトロピン濃度が1%でしたが、マイオピンの場合はアトロピン濃度が0.01%という低いため、先述した副作用が出ません。

マイオピンの特徴

近視の進行を遅らせます

近視の進行を平均60パーセント軽減させます。有効な効果を得るために少なくとも2年以上の継続をおすすめいたします。

また、この治療は近視の進行を軽減するものであり、完全に停止するものではありません。

高い安全性

マイオピンの研究開発元であるシンガポール国立眼科センターの調査によると、アレルギー性結膜炎及び皮膚炎が発症したり、白内障を形成したりといった副作用が生じたという報告はありません。

日中に光が眩しく感じることがありません

アトロピンは瞳孔を開かせる作用があり、従来のアトロピン点眼薬には日中の眩しさや、近方が少し見にくくなるという副作用がありましたが、マイオピンはアトロピンの濃度が極めて低いため、日中のまぶしさや近方が見にくくなるような症状がほとんどありません。

非常に簡単な治療です

マイオピンでの治療は、毎日就寝前に1滴点眼するだけと、非常に簡単な治療です。煩雑な作業はありません。

1か月使い切りで衛生的です

マイオピンの内容量は1本あたり5mlです。毎日両眼に1滴ずつの使用で、1か月で使い切ることができますので、衛生的に使用することができます。残っていても使い続けないでください。

品質管理が徹底されています

マイオピンはGMP(医薬品製造管理および品質管理基準)準拠の工場で製造されていますので、安心の品質です。

マイオピン処方の流れ

  1. お子様の視力や目の状態などの検査および診察を行います。
  2. 診察後、ご希望があればマイオピン(点眼薬)を処方します。
  3. 処方後1カ月経過後に再度診察、その後は3カ月ごとの定期検査となります。

マイオピン治療の費用について

マイオピンの治療は自費診療にて行っております。
下記料金表は、「0.025%」マイオピンをご使用時の金額です。

マイオピン診療フロー
  • 以降、3ヶ月毎の「定期検査」と、6ヶ月ごとの「調節麻痺薬点眼後の屈折検査」となります。
  • マイオピンは、最低でも2年以上継続することで近視抑制効果が得られます。
  • マイオピンの追加購入金額については以下のとおりです。
0.01%マイオピン
1本 3,600円
0.025%マイオピン
1本 3,800円

ご注意いただく点

下記の症状や、その他不快な症状が現れた場合は、ただちに使用を中止し診察を受けてください。

  • 眩しさ、または強い光による不快感や目の痛み
  • 近くの物がぼやけて見え、読み書きなどの作業が困難になる
  • 眼の痒みや瞼のただれ

オルソケラトロジーについて

オルソケラトロジーレンズを装用することで、眼軸長の進展抑制効果が得られ近視の進行を抑制する効果があることが世界中で報告されています。
多くの報告に基づくと2年間で30〜60%程度の抑制効果が期待できるとされています。

オルソケラトロジーとマイオピン点眼の併用

近視進行には眼軸長の進展が大きく影響しています。
オルソケラトロジー単独に比べ、オルソケラトロジーとマイオピン点眼(0.01%アトロピン点眼)を併用する事に眼軸長の進展が1年間で約50%抑制されたとの報告があります。